白の色鉛筆

需要と供給が成り立っていない存在

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ドレッシング 拳銃 くじら

 そういえば、つい先日に久々の三題噺で一つほど作品を書いてみました。お題を出したのは私じゃなくある方で、『ドレッシング 拳銃 くじら』がお題。
 製作時間は約二十分。





 サラダは食べない。それが私のポリシーであり、モットーであり、信条でもある。多くの人はそれを嘲り、偏食だと笑う。だが、それはそれでいい。確かに私は偏食だ。ベジタリアンの天敵にして、肉食動物のお友達。そんな人間を好き嫌いが無いと表現できるほど、日本語というのは馬鹿げてもいない。
 だが、私の手の中に握られているのは空っぽになったドレッシングの容器。おおよそ生涯を通して縁が無いであろうはずのそれを、私は後生大事に持っていた。誰かの形見というわけでもないのに。
 空を見上げる。青い。そして雲が白い。
「ミチル」
 私の足にロケットブースターが付いていれば、今日は絶好の飛行日和だ。惜しむらくは此処が我が家の庭であり、間違っても種子島宇宙センターではないということか。
「生肉を食べているところを見られて彼氏を三人失ったミチル」
「過去を掘り返さないでよ、姉」
「無視するからよ。ちゃんと返事してくれたなら、私だって可愛い妹の過去をほじくり返すことなんてしないわ」
 我が姉はサラダを抱え、酷く眩しい笑顔でそう言った。磁石で例えるならS極の姉だ。
「それより、早く行ってきなさいな。私はもうお腹ペコペコなの。空腹、分かる?」
「柱でも齧ってたら良いじゃない」
「大黒柱齧るわよ」
「それで死ねるなら父も本望よ」
 娘を溺愛することにかけては右に出る者がいない我が父。一度、本気で愛娘を目に入れようとして失明しかけた事件はあまりにも有名ではない。恥部なのだ。外部に漏らしてはいけない。
「あなたがサラダを嫌いなのは分かる。ひょっとしたら辛い思いをするかもしれない。でも、これはあなたにしか出来ないことなのよ」
「姉でも出来るだろ」
「嫌よ、面倒くさい」
 これだもの。仮契約的な姉妹ならば、ここで縁切りをしているところだ。
「鯨なんて捌いたことないもん」
「私もないわよ」
「包丁握ったことあるでしょ。だったら、うん大丈夫!」
 姉は料理人を格闘家か何かと勘違いしているのではないだろうか。いや、格闘家だって鯨は捕まえない。
「ごまドレッシングなら近所のスーパーで売ってるよ」
「私は鯨油をドレッシングに食べてたいのよ。そう、私は鯨油を飲まないと死ぬ女なの」
 背後では鯨油にも負けない脂っこい顔つきの男が、鯨油は痩せると連呼していた。
 さて。
「包丁で鯨が捕まえられるとでも?」
 姉は少しだけ難しい顔をしたかと思えば、家に戻って何やら新聞紙の塊を持ってきた。そして、それを私に手渡す。
「なにこれ?」
「開けてご覧なさい」
 誕生日プレゼントを渡すかのような慈母の如き温かい言葉に導かれて開くと、途端に硝煙や血の臭いがこんにちがしそうな武器が姿を現す。
 有り体に言えば拳銃であり、無し体に言っても拳銃だ。
 何故、このような物騒な武器が此処にあるのか。聞いてみたいところだけれど、それで物騒な世界に片足を突っ込みたくはない。
「これなら鯨だってイチコロよ」
「姉、鯨の大きさ知ってるの?」
「ネズミよりは大きい」
 大発見だ。我が姉は馬鹿だった。
「世界で一番大きなほ乳類を、この拳銃で殺せっての?」
「そういうことになるわね」
「無理よ」
「平気平気。弾は一発だけしか入ってないから」
 むしろ難易度が増したわけだが、我が姉はご満悦といった様子を隠しもしない。たかが拳銃で、それも一発で。鯨を捕獲できるはずもなかった。
 仕方ない。
「しょうがないわね、分かったわよ」
「本当、お姉ちゃん嬉しい!」
「要は、姉の悩みを解決すればいいんでしょ」
 撃鉄をおこし、引き金を引いて、銃声が木霊する。
 嬉しそうな我が姉の額に、ぽっかりと小さな穴が空いていた。
 吹き出した赤いドレッシングがサラダにかかる。
 これだから、私はサラダが嫌いなのだ。鉄臭い。
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  1. 2009/04/26(日) 01:37:27|
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ノーマルシューター。でも神奈子様は苦手。
諏訪子様と小傘とお燐とお嬢様がいればそれで良い。

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