白の色鉛筆

需要と供給が成り立っていない存在

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《チャンネル戦争を繰り広げるのこと》

 子供の多い家庭において、チャンネルというのは一種の神器である。
 テレビという娯楽を独占し、その気になれば音量だって自由自在。テレビを支配することは、居間を支配することに等しい。
 かの英雄ナポレオンもそう零した程だ。
 ゆえに断言できる。
 現時点で、居間を支配しているのは諏訪子だと。
「もう、いい加減チャンネル変えてくださいよ諏訪子様」
 早苗の苦言を無視して、諏訪子はテレビを食い入るように見つめる。
 ブラウン管の中では、暗い顔をした男が薄暗いトンネルの前に立っていた。
『いやあ、これは止めておいた方が良いですよ。凄く良くないものが立ちこめている。遊び半分で来ない方が良い』
 右上のテロップには、驚愕の心霊スポットを巡る、という文字が踊る。
 夏に成ると増える物の一つ。心霊番組であった。
「食事時ですよ。そういうのを見ていたら、食欲が無くなるじゃないですか」
「なんでさ。バカバカしくて面白いじゃん」
 神様相手にしんれい番組を見せたところで、所詮は糠に釘。蓬莱人にナイフのようなもの。
 むしろ霊が怯えて消えるだろう。
「あはははは、ほら早苗も見てみなよ。あそこに霊がいるんだって。何にもいないのに、人間は面白いよね」
 諏訪子は食べる手を止め、愉快そうにちゃぶ台を叩く。
 黙々と箸を動かしていた神奈子が鬱陶しそうに横目で睨むが、諏訪子は気にした風もない。
 一方の早苗は不自然なまでに首を捻り、敢えてテレビを見ないようにしていた。
「どうしたの、早苗。それじゃあテレビが見られないよ?」
 分かっているのに、諏訪子は尋ねる。
「酷いですよ、諏訪子様。この手の番組が嫌いだって、知ってて言ってるでしょ」
 どういうわけか、早苗はこういった心霊番組が大嫌いだった。
 現人神だからなのか、それとも生まれ持った気質なのか。
 前からその手の話を聞かないようにしていたことだし、おそらく後者なのだろうと諏訪子は判断している。
 まあ、いずれにせよ関係ない。
 ここで諏訪子が成すべきことは、一つしかないのだから。
「まあまあいいじゃないの。テレビはみんなで共有しないと、ねっ!」
「きゃあっ!」
 早苗に飛びつき、強引に首をテレビに向ける。
 必死に抵抗する早苗だったが、顔はいつのまにかブラウン管へと向けられていた。
「ほらほら、あれなんか人の顔に見えない? それもかなり恨みの籠もった」
「見えません! 目の錯覚です! 全てはプラズマで説明できます!」
 半ば自分の存在も放棄しかねない発言が飛び出すほど、早苗は混乱していた。
 そこまで怖がるとは、尚更止めるわけにいかない。
 諏訪子は早苗の頭を掴む力を強めた。
 その隙を狙っていたのか。早苗の手がチャンネルに伸びる。
「しまった!」
 気づいた時には遅かった。
 守矢のルールでは、チャンネルを握った者に番組の選択権がある。
 だから番組を変えられても、文句を言うことができないのだ。
 今や選択権は早苗にある。
「ちぇっ、せっかく良いところだったのにさ」
「……とにかく、これで心霊番組は終わりです。もっと食欲をそそるような番組に変えますからね」
「はいはい」
 などと言いながら、早苗が選んだ番組は『恐怖! 密林の奥に生息する巨大アナコンダを追う!』という木スペだった。
「わあ、凄いですよ諏訪子様。あのアナコンダ、蛙を一飲み」
「いやああああああああっ!!」
 立場逆転。
 耳を塞いで目を閉じる諏訪子を、強引に取り押さえる早苗。
 強制的に開かれた目蓋の先に見えるのは、蛙を飲み干していく巨大な蛇の姿だった。
 再び、社務所に悲鳴が響き渡る。
 空っぽの茶碗を置いて、神奈子が呟いた。
「仲いいのね、あなた達」
 二人は全く聞いていなかったという。



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  1. 2008/04/08(火) 23:43:38|
  2. 守矢のこと
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ノーマルシューター。でも神奈子様は苦手。
諏訪子様と小傘とお燐とお嬢様がいればそれで良い。

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