白の色鉛筆

需要と供給が成り立っていない存在

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《迷信を頼るのこと》

 幻想郷の情報を知る上で、文々。新聞は欠かすことの出来ない情報誌だ。
 外の世界ではこぞって新聞社が勧誘合戦を繰り広げていたが、ここではあまりそういうことがない。
 当然だ。天狗達は何の断りもなしに配っているのだから。
 軒先に配られていた新聞を拾い上げ、諏訪子は記事に目を通す。
「ふむ……紅魔館の経済事情に迫る。家計もまさしく真っ赤っかと」
「諏訪子様、そこテレビ欄です」
 何をどう読みとったのか。
 後ろからツッコミを入れる早苗を無視して、諏訪子は新聞をひっくり返す。
 テレビ欄の後に天気予報とは。
 子供か、この人は。
 思わず早苗は、心の中でつっこんだ。
「今日は晴れか。ここのところ、毎日晴れてるね」
「良いことです。雨が続くと洗濯物が乾かなくて困ります」
 炊事洗濯を請け負う早苗からしてみれば、できる限り空には晴れていて欲しい。
 室内で干していると、どうにもジメジメして気が滅入る。
 かといって、雨雲をどけるわけにいかない。
 むやみやたらに天気を弄ると、後々になって後遺症が出てくるのだ。
 その辺りを分かっているからこそ、雨が続いても神奈子や諏訪子は何も言わないのだ。
 人間というか神様が出来ている。
 早苗は、そういった諏訪子のそういったところは尊敬していた。
「よし、晴れてばかりじゃ面白くないから雨降らしてよ」
 尊敬という感情が旅立っていく。
 行き先はマカオか香港か。
 いずれにせよ、もう二度と再会することもあるまい。
「駄目です。面白半分で天気を変えてはいけません。酷い日照りが続いて、致命的なまでの水不足に陥ったなら話は別ですけど」
「昨日、猫の式神が顔洗ってたよ」
「だからどうしたんです」
「夜雀が低く飛んでいた」
「そういう日もあるでしょう」
「ケロケロ」
「降らせませんよ」
 数多の迷信で挑む諏訪子だが、早苗の意志は固かった。
 雨蛙のように頬をふくらませる諏訪子。
 そうしていたら、本当に雨が降るんじゃないかとすら思える。
「もういいよ! 早苗の馬鹿! 2Pカラー!」
「ひ、人の急所をえぐりこむような罵詈雑言。神様といえども許さん。待ちなさい!」
 猛ダッシュで逃げ去る諏訪子の背中を追う早苗。
 しかしそこはさすがの神様。
 人里を越えて紅魔館まで走り抜いても、一向にその距離が縮まることはなかった。
 すわ、死神が距離を操ったのかと思うほどだ。
 そんな追走劇を30分ほど繰り広げたところで、ようやく諏訪子のスピードも落ちてくる。
 だが、早苗のスピードも同時に落ちる。
 そして失速を続けた二人はやがて、湖の畔で力つきた。
「はぁはぁはぁ……もう……諦めましたか……諏訪子様」
「い、良いじゃんよ……少しぐらい……雨降らせてくれたって……」
 諏訪子の目尻には、うっすらと涙の跡が見える。
 走りながら泣いていたのか。
 早苗は息切れしながらも、諦めたようにため息をつく
「仕方ないですね」
 それを聞いて、諏訪子の表情が明るくなった。
「それじゃあ!」
「ええ。雨乞いでもして、頑張って雨を降らせてくださいね」
 極上の笑みで、諏訪子の願いは両断される。
 怒った諏訪子に追いかけられ、早苗が守矢神社に帰還したのは、それから30分後のことだった。
 まだうっすらと涙の跡が見える諏訪子を見て、神奈子は口を開いた。
「迷信も馬鹿にはできないものね。まあ鳴いてはいないようだけど」


 
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  1. 2008/07/10(木) 22:59:33|
  2. 守矢のこと
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《駄洒落で目覚める朝のこと》

 はてさて、何に影響されたのか。
 朝起きたら、諏訪子に銃を突きつけられていた。
「動くな」
 黒く染めたマスク越しに、くぐもった声で脅される。
 帽子も黒く染められ、目はサングラスが邪魔して見えない。
 よく見れば、格好も全体的に黒っぽかった。
 寝ぼけ眼をこすりながら、鬱陶しげに銃をどける。
 触ってわかった。
 これ、かっぱ巻きだ。
「もう、朝から何ですか。起こすにしたって、もうちょっと気持ちのいい起こし方をしてくださいよ。あと磯臭い」
 文句を言われて、諏訪子はかっぱ巻きを引っ込める。
「一度やってみたかったの。特殊部隊みたいにさ、銃を突きつけるやつ」
「かっぱ巻きじゃないですか」
「これしかそれっぽいのが無かったの。もうノリが悪いな」
「それ、高かったんですよ」
「いや、そういうことじゃないから」
 早苗はそれほど寝起きが良い方ではじゃない。
 こうして普通に会話しているように見えて、実は頭は平常時の半分も働いていなかった。
「なによ、朝から騒々しいわね」
 横にいた神奈子も、この騒動で起きてしまったようだ。
 もっとも、今は朝の六時半。
 起こしたところで、怒られるいわれはない。
「何、その格好は? 強盗の真似事?」
「外の情報に疎いなあ。これは特殊部隊の格好なのさ」
 早苗と神奈子は顔を見合わせる。
 こんな特殊部隊がいようもなら、間違いなく蜂の巣だ。
 どちらかといえば、忍ことに失敗した忍者という方が正しい。
 諏訪子は至って満足そうだが、もしあの格好をしろと早苗が言われたら、間違いなく泣いて土下座する。
「今宵のかっぱ巻きは、血に飢えておるわ」
「吸血鬼じゃないんですから、付けるなら醤油にしてください」
「……本当、ノリが悪いよね」
「高かったんですって」
「天丼はどうかと思うよ」
「かっぱ巻きです」
 寝起きの早苗とテンションの高い諏訪子。
 よもや幻想郷に、これほど会話の噛み合わない二人がいようとは。
 お釈迦様でも気づくまいて。
 まあ、神奈子は神様なのでとっくの昔に気づいていたが。
「それにしても、よりによって何で特殊部隊なのか……」
 神奈子は腕を組み、騒ぐ二人へ目をやった。
 そして気がつく。
「とりあえず今日の朝ご飯はかっぱ巻きにしようよ。せっかくだから」
「何がせっかくなのか分かりません。だけど、諏訪子様の朝食がかっぱ巻きだけで良いってことは理解しました」
「そんなこと言ってないじゃん!」
「もう、ノリが悪いですね」
「どっちのノリも良いよ!」
 頬を掻いて、神奈子は呟いた。
「ああ、諏訪ットね……くだらない」


 
  1. 2008/06/08(日) 23:08:57|
  2. 守矢のこと
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《諏訪子に挑戦するのこと》

「早苗、ゲームして遊ぼ!」
 神社業務の合間に休憩していた早苗の元へ、ボードゲームらしきものを抱えた諏訪子がやってきた。
 人が働いているのに。
 などという怒りも沸いたが、よく考えてみたら神様に働かせるのも妙な話である。
 巫女が休み、神様が働く。楽でいいが、神社としてはどうだろう。
「ねえねえ、今休憩中なんでしょ。だからさ、私の作ったゲームで遊ぼ」
「諏訪子様の作ったゲームですか。それ、ちゃんとしたゲームなんですか?」
「勿論。プレイ推奨人数は四人だけど、一応二人でも遊べるよ」
 そう言いながら、諏訪子は縁側に抱えていたものを広げ始める。
 二つ折りになっていたそれは、どうやらすごろくのようだった。
 しかし、隅っこに作られたルーレットや、マスの目を見ていると、これと似たようなゲームの名前が頭に浮かんでくる。
「これ、人生ゲームじゃないですか?」
「違う違う。蛙生ゲーム」
 語呂を合わせようという片鱗すらない。
「蛙になって、蛇や鳥から逃げながら子供をどんどん増やしていくゲーム。ゴールの時点で、より多くの蛙を産んでた人の勝ち」
 蛙嫌いの人が聞いたら、鳥肌が立ちそうなゲームである。
「コモリガエルがプレイヤーね」
 スタートと書かれたところに、蛙の形をした駒が置かれる。
 早苗の記憶が正しければ、コモリガエルは背中で子供を育てる変わった蛙のはず。
 このゲームに最も適している蛙と言えよう。
 それにしても、無駄に芸が細かい。
「じゃあ早苗から初めていいよ」
「分かりました。その代わり、1回だけですよ」
 愚痴りながら、ルーレットを回す。
 8の目が出た。
「6、7、8。道路に飛び出してぺっちゃんこ。スタートに戻る」
「残念。次は私の番。えっと5だから……毒性を持っていたのが運の尽き。採取されて矢尻に塗られる。スタートに戻れ」
 なんというデスゲーム。
 かつて、これほどまでに弱肉強食なゲームがあっただろうか。
「これ、殆どスタートに戻る目ばかりじゃないですか」
「自然界は過酷だからね」
「ゲームですよね」
「リアルさを追求したゲーム。それが蛙生ゲーム」
 嫌なゲームだ。
 人生ゲームで言うならば、全ての目が出費ばかりで収入が給料しかないようなものである。
「次、早苗だよ」
「7が出ました」
「7は……ケロちゃん風雨に負けてスタートに戻される」
 その後、二時間に渡って戦いは続いたが、決着がつくことは無かったという。
 二人がスタートから脱出することはできず、早苗は改めて自然界の恐ろしさを知った。
 後に神奈子はこう語る。
「そんなゲームにマジになっちゃってどうするのよ」


  1. 2008/05/06(火) 23:21:54|
  2. 守矢のこと
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《たまには勉強をするのこと》

「諏訪子様、火縄銃が伝来したのって何年でしたっけ?」
「閏年」
「……八坂様」
「1543年よ」
 神奈子の答えを聞いて、ノートに数字を書き写す。
 一応は学生だった早苗の為に、慧音が特性のドリルを作ってくれた。
 幻想郷に来てからすっかり学力の落ちていた早苗は、それを使ってかつての学力を取り戻そうとしていたのだ。
 案の定、分からないところもあったが、それは神奈子に訊けば問題ない。
 最初は歴史が得意だという諏訪子に訊いていたのだが、どうにも見当外れの答えしか返ってこないので止めた。
「またそうやって神奈子の方を信じる。大体1543年なんて、ついこないだじゃない」
「いえ、ざっと500年前です」
「時の流れって早いね」
「誤魔化さないでください」
 まあ、何千年も生きていれば時の感覚が狂うことだってある。
 だがそれにしたって、500年はそこそこ長い時間だ。
 神様だからといって、誤魔化せるような年数じゃない。
「仕方ないじゃん。歴史は苦手なんだよ」
 神様にあるまじき発言であった。
「歴史が得意だと言ってたじゃないですか」
「一般的に知られてないレベルの歴史ならね。例えば出雲を揺るがした一大スキャンダルとか。あのね……」
 飛んできたシャープペンシルが、諏訪子の帽子を貫いた。
「人様の事情をベラベラと喋らない」
 余程、言われたくない何かがあるのか。
 神奈子の表情にはかなり余裕がなかった。
「ああ、私の帽子に口ができた……」
「後で縫ってあげるから、貸しなさい」
「自分でやっておいてその言いぐさ! 畳に額をこすりつけるぐらいしたらどうなのさ!」
 再び空を飛ぶシャープペンシル。
「口が鼻の穴になった……」
 がっくりと肩を落とす諏訪子。
 力無く、帽子を神奈子に手渡す。
「それというのも、全部早苗が余計なこと言うからだ! 歴史なんて勉強しなくても、一般常識ぐらいのレベルがあればいいんだよ!」
「八つ当たりですか。じゃあ、聞きますけどペリーが来航したのは何年だか答えられますか?」
「ペリー? 悪いけど英語は苦手なの」
「外国人の名前です」
 しばし考えた諏訪子は、目を輝かせながら答えた。
「ツチガエル見つけた人だ」
「違います」
「じゃあニホンヒキガエル」
「違いますって」
「何ガエルを見つけた人なのさ」
「なんで蛙の発見者に限定されてるんですか! ペリーは黒船で来航し、鎖国していた日本を開国させた人です。来航したのは1853年」
 おお、と頷く諏訪子。
「だけど、早苗。そんな年号なんて覚えても何の意味もないよ。大切なのは、それがどういう結果をもたらし、どういう風に変化を起こしたか。いつなんてのは、調べれば良いこと。そこから何を感じ、どう学ぶか。それが勉強の本質だと私は思うな」
 早苗は言葉に詰まった。
 確かに、年号なんか必死に覚えても何の役にも立たない。そんなものは、所詮受験の為に用意されたふるい落としの道具。
 ある程度の時代さえ分かっていれば、それほど重要な要素ではない。
「諏訪子様の言うとおりです。すいませんでした、無茶な質問なんかして」
「いいよいいよ。ところで、ペリーって何ガエル?」
 ちゃぶ台の上に突っ伏す早苗。
 無言で針仕事をしていた神奈子が、呆れたように呟いた。
「一番大切なのは、人の話を理解することよ」


  1. 2008/04/29(火) 22:49:55|
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《見えない敵と戦うのこと》

 神の天敵と言われて、思い浮かぶものは三つある。
 一つは科学。奇跡という神秘を分解し、信仰を気休めに変える魔の技術だ。
 一つは異教。日本の神はそうでもないが、一神教の神様なんかは他の神様を認めはしない。
 そして最後は魔。妖怪、悪魔、幽霊。とかく、そういった類のものである。神様自体はそれほど敵視していないが、あちらは神のことをそれほど良くは思っていない。
 しかして、早苗の天敵はそのどれにも当てはまらなかった。
 鋼鉄製の身体。見るものを萎縮させる顔。
 塔のように屹然と伸ばされた背筋は、まるで自分が優位に立っているのを勝ち誇っているのかようだ。
 それでいて、下半身は広く人を受け入れるように大きく、そして頑丈である。
 もっと狭量であってくれれば、足を踏み入れることもないだろうに。
 早苗はため息をつき、天敵の顔を睨みつける。
 だが、いつまでもこうしているわけにはいかない。
 お風呂上がりの早苗の身体には、バスタオル一枚しか羽織られていなかった。
 このままでは風邪をひく。
 呼吸を整え、早苗は天敵の懐に飛び込んだ。
 目盛りが動き、非情なる宣告をその目にする。
「おー、太ったね」
「す、諏訪子様!?」
 早苗の後ろから覗き込むように、諏訪子が現れた。
「確か前の体重が××kgだから、2kg増えたのかな。いやあ、ごっつぁんです」
「なんで私の体重なんか知ってるんですか!」
 赤面しながら、手で目盛りを隠す。
 既に手遅れではあるが、混乱した早苗には関係ない。
「いいじゃない、いいじゃない。ちょっとぐらい太ってる方が、女の子は魅力的だって。デブ……じゃなくて早苗」
「一文字として合ってない間違いをどうもありがとうございます」
 謝罪こそ述べているものの、その顔は全く笑っていない。
「でも、そういう諏訪子様も危ないんじゃないですか。最近、食べては睡眠の繰り返しですし。人の事を笑われてる場合じゃないと思うんですけど?」
 早苗の指摘を、諏訪子は鼻で笑った。
「馬鹿だね。神様は太らないのさ」
「な、なんですって!? なんて、羨ましい……」
 頭を押さえ、壁にもたれかかる。
 一々カロリー計算をしないとケーキすら食べられない早苗にとって、それはあまりにも酷な情報だった。
 これが現人神と神様の違いか。
「残念だったね、早苗。見てみなさい。ほら、この通り……おおう」
 目盛りが刻むのは、明らかに増えてであろう諏訪子の体重。
 ショックでその場に崩れ落ちた諏訪子の背後から、神奈子の容赦ない一言が襲う。
「神だって太るわよ」
 地面に仰向けに倒れながら、諏訪子は言った。
「神は死んだ」
 そして、神奈子がつっこんだ。
「死んでるのはあなたの体重管理よ」


  1. 2008/04/23(水) 00:13:11|
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ノーマルシューター。でも神奈子様は苦手。
諏訪子様と小傘とお燐とお嬢様がいればそれで良い。

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